基幹講座
医薬デザイン工学分野
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先天性免疫細胞の免疫学
先天性免疫、骨髄系細胞、C型レクチンレセプター、抑制性レセプター
先天性免疫細胞が自己と非自己を識別し、自己への攻撃を防ぐ仕組みを理解する
私たち多細胞生物の体は、外界から侵入する病原体から、免疫システムによって守られています。免疫システムには、先天性免疫システムと適応免疫システムがありますが、適応免疫システムでは、基本的には、自己と反応する細胞が発生の過程で除去されるのに対し、先天性免疫システムではそのような過程は知られておらず、自己を認識する抑制性レセプターの働きにより、正常な自己の攻撃を防いでいると考えられています。
本研究分野では、先天性免疫細胞に発現している抑制性レセプターが認識する自己分子を明らかにすること、抑制性レセプターに対する抗体を用いて、先天性免疫システムを制御することを目指しています。
(1)DCIRファミリー分子発現細胞の同定
ヒトDCIRファミリーは抑制性レセプターのDCIRと活性化レセプターのBDCA2からなりますが、マウスDCIRファミリーは4種の抑制性レセプターDCIR1~4と2種の活性化レセプターDCAR1, 2により構成されています。これらのレセプターの遺伝子はマクロファージ、単球、好中球、好酸球等を含む骨髄系細胞で発現していることが知られていましたが、それぞれのレセプターの各骨髄系細胞集団での発現についてはよく解析されていませんでした。私たちは、マウスDCIRファミリー分子のそれぞれを特異的に認識するモノクローナル抗体を樹立し、体内の様々な器官における各骨髄系細胞集団でのDCIRファミリー分子の発現を明らかにしつつあります。
(2)DCIR2リガンド欠損マウスを用いたDCIR2の機能解明
私たちはこれまでの解析でマウスDCIR2がbisecting GlcNAcと呼ばれる特殊な構造を持つN型糖鎖を認識することを明らかにしました。しかしながら、DCIR2によるこのDCIR2リガンド認識の生理的役割については明らかになっていません。そこで、DCIR2リガンドの生合成に必須な糖転移酵素Mgat3遺伝子を欠損するマウスを用いて、DCIRw2リガンド欠損がDCIR2発現骨髄系細胞の機能に与える影響を調べ、DCIR2が生体内で果たす役割を明らかにします。
(3)骨髄系細胞抑制性レセプターを標的とした炎症制御
自己免疫疾患やCOVID-19のような炎症を伴う疾病において、過剰な炎症によって重篤な病態がもたらされることが知られています。炎症において、骨髄系細胞は中心的な役割を果たしています。私たちは、骨髄系細胞上に発現する抑制性レセプターを標的として炎症を制御することができるのでないかと考え、炎症性疾患の新たな治療法を開発することを目指しています。