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連携講座
がん先端生命科学分野

大橋 紹宏 客員准教授 博士(農学)

Theme

腫瘍生物学・ドラッグディスカバリー・薬理学

Keyword

染色体不安定性、DNA複製ストレス、分子標的治療薬、マルチオミックス解析

Message

分子標的癌治療薬を開発する上で、癌の特性(Cancer Hallmarks)と脆弱性(Cancer Vulnerability)を理解することは非常に重要です。我々は癌の特性の1つである「染色体の不安定性」に着目し、1)DNAの複製や修復の異常、染色体の不均等分配によって引き起こされる「染色体の不安定性」が、癌細胞に対してどのような細胞内ストレス(染色体不安定性ストレス)を与えるのか、2)「染色体不安定性ストレス」が引き起こす生存負荷に対して、癌細胞がどのように適応しながら、その生存・増殖を維持しているのか(染色体不安定性ストレスへの順応性)3)癌細胞の「染色体不安定性ストレスへの順応性」が、逆に「外部環境変化に対する適応の弱さ」を引き起こす可能性があるかどうか(癌の脆弱性や薬剤感受性)、4)染色体不安定性ストレスが関与する「癌細胞の脆弱性や薬剤感受性」をターゲットとした新規癌治療法の開発の可能性、を明らかにするために、分子・細胞生物学、ケミカルバイオロジー、薬理学、生命情報学など、多角的な実験アプローチを用いながら、基礎研究・トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)活動を進めています。これらの知見を最大限に活用し、国内外のアカデミア、バイオテック、製薬会社と協力しながら、新規分子標的治療薬の研究・開発を目指していきます。

研究者紹介

京都大学大学院農学研究科では、生殖生理学研究室(現・生殖生物学研究室)に所属し、修士課程・博士課程の5年間、マウス初期胚の発生と細胞周期の研究に携わってきました。これが私の研究人生のスタート地点です。学位取得後は、研究の場を米国メイヨクリニックに移し、研究テーマも発生学から腫瘍生物学に大きくシフトさせました。メイヨクリニックでは博士研究員(ポスドク)として約4年半、家族性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子BRCA2の機能解析など、がんの基礎研究をおこなってきました。ポスドク修了後は武田薬品工業株式会社のがん創薬研究部門(Oncology Drug Discovery Unit)に入職し、製薬企業の研究者として応用研究にフォーカスした新たな研究キャリアをスタートさせました。武田薬品工業には12年間在籍しましたが、その在籍期間中、新規プロジェクトの立ち上げ、化合物スクリーニングから臨床候補化合物選出までの創薬研究フロー全般、グルーバルチームでの開発戦略立案、など、がん分子標的治療薬の創薬研究・臨床開発について本当に多くのことを経験させていただきました。2018年9月からは、研究の場を国立がん研究センター先端医療科発センターに移し、再びアカデミア研究者としてのキャリアをスタートさせました。これまでの経験を活かし、日本のがん研究の発展に少しでも貢献できるよう、国内外のアカデミア、製薬企業、バイオテックと連携しながら、新規治療法の開発を目指したがん創薬研究をチーム一丸となって進めてまいります。

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  • 実験室風景

研究者略歴

1997年  京都大学 農学部 卒業
2002年  京都大学大学院 農学研究科 応用生物科学専攻 博士課程修了
2002年  Mayo Clinic, Radiation Oncology, 博士研究員(Dr. Junjie Chen)
2004年  Mayo Clinic, Laboratory Medicine and Pathology, 博士研究員(Dr. Fergus Couch)
2006年  武田薬品工業 癌創薬ユニット(旧創薬第二研究所)、研究員
2007年  武田薬品工業 癌創薬ユニット、主任研究員
2014年  武田薬品工業 癌創薬ユニット、分子機能サブグループヘッド
2016年  武田薬品工業 癌創薬ユニット、分子薬理グループヘッド
2017年  TAKEDA Pharmaceuticals International, Inc., シニアサイエンティスト
2018年  国立がん研究センター・先端医療開発センター・ゲノムトランスレーショナル分野・ユニット長
2021年  東京理科大学・生命科学研究科・客員准教授
2022年  東京大学大学院・新領域創成科学研究科・客員准教授