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基幹講座
遺伝システム革新学分野
  • 小嶋 徹也准教授

    発生生物学・進化発生生物学

    形づくり、形態形成、形態進化、適応進化

生物の多彩な“形づくり”の神秘に挑む

生物は、その姿・形を実に多様に進化させて周りの環境に適応しています。遺伝システム革新学分野では、「どのようにして“形”が出来上がるのか」「どのようにして“形”の違いが生まれるのか」「どのようにして“形”が進化するのか」といった、「生命の多様な“形づくり”のメカニズム」を理解することを目標に研究を進めています。
これまでの様々な研究から、発生過程においてそれぞれの細胞の性質が決定されるメカニズムについては、かなり理解が進んできました。しかし、細胞の性質が決定された後、具体的にどのように最終的な“形”が完成するのかといったことについては、未だにほとんど理解が進んでいません。
昆虫は、100万種以上の種数を誇り、その“形”の多様性についても群を抜いており、“形づくり”のメカニズムを研究するのに最適な生物です。その中でも、ショウジョウバエは、好きな細胞で好きな時期に好きな遺伝子の活性を好きなだけ変化させることができ、また、様々な遺伝子やタンパク質の発現や局在を生きたままリアルタイムに可視化できるツールも揃っていることから、私達の研究室では、他の昆虫との違いを見据えた進化的な視点も交えて、ショウジョウバエを中心に、主に以下のような研究を進めています。

【研究テーマ】

(1)付属肢の形づくりの分子機構

昆虫では、元々は同じ形態をしていた肢や触覚、口器といった付属肢を様々に進化させてきました。特に、成虫肢は遠近軸方向に分節化されていますが、昆虫種によって、それぞれ分節の数や形が大きく異なります。私達は、ライブ・イメージングを駆使してショウジョウバエの成虫肢の“形”ができあがる様子を連続的に観察することで、その“形づくり”のメカニズムについて研究しています。ショウジョウバエの成虫肢形成過程の理解を通じて生物の形づくりの分子機構を理解し、さらに、それがどの様に変化することで付属肢や昆虫種間での形態の違いをもたらすのかについても解明し、生物の“形づくり”や“形”の進化・多様性の謎に迫ることを目指しています。

(2)細胞外マトリックスによる体形の制御機構

昆虫は外骨格を持つ生き物で、その体はクチクラと呼ばれる細胞外マトリックスによって覆われています。クチクラは表皮細胞から分泌されたキチン繊維やクチクラ・タンパク質と呼ばれる様々なタンパク質などの物質から構成されています。昆虫の体型は丸っこかったり細長かったりと様々ですが、最近の研究から、クチクラ・タンパク質によって決定されるクチクラの性質が、昆虫の体型を決めるのに重要な役割を果たしていることがわかってきました。このような研究を通じて、細胞そのものではなく、細胞外に分泌された物質によって、どのように生物の形が制御されているのかを解明します。

(3)クチクラに「切取り線」をつくる分子機構

昆虫は、成長の過程で脱皮をします。脱皮の際には、古いクチクラを脱ぎ捨てて、新しいクチクラに覆われた個体が出てきます。この時、古いクチクラはランダムに破れるのではなく、必ず決まった場所が開裂します。つまり、クチクラには脱皮の際の「切取り線」があるわけです。この「切取り線」がどのようにして形成されるのか、その位置はどのように決まっているのか、そもそも「切取り線」として働くためのクチクラの構造はどのようなものなのか、などについて明らかにしようとしています。また、「切取り線」はすべての昆虫にとって、もっとも基本的で必須のものであることから、「切取り線」についての研究を通して、昆虫全体の進化についての理解を深めようとしています。
  • 様々な昆虫の成虫肢

  • ショウジョウバエの蛹の肢(上)と成虫肢(下)

  • 蛹の殻の「切取り線」を開裂して、羽化しようとしているショウジョウバエの成虫

  • クチクラ・タンパク質の変異体の蛹(真ん中が野生型)