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分野・教員一覧
基幹講座
生命応答システム分野
  • 大矢 禎一教授

    分子遺伝学、発酵工学

    出芽酵母、画像解析、抗真菌剤

  • 鈴木 邦律准教授

    細胞生物学、分子生物学

    出芽酵母、ライブイメージング、オートファジー

真核細胞のモデル生物である出芽酵母を使った研究

 私達の研究室では、真核細胞のモデル生物である出芽酵母を使って、バイオイメージング技術と細胞生物学的手法を用いて研究しています。出芽酵母のゲノム上に約6,000ある遺伝子全ての変異株を対象にして、独自に開発した画像解析システムを用いて細胞形態やオルガネラ情報を高次元表現型情報として集積し、多変量解析の技術を駆使して、遺伝子の機能ネットワークを包括的に明らかにしようしています。変異株の詳細かつ網羅的な解析により、新しい遺伝学のドグマの発見、遺伝子機能と形態表現型の間の密接な関係の発見、新しい遺伝子機能の解明、クラスタリングによる変異株のクラス分け、形態情報に基づく化合物の標的予想とその検証などを行ってきました。また、モデル真核細胞の特徴を生かして、バイオイメージング技術と細胞生物学的な解析手法を組み合わせて細胞内分解システムであるオートファジーのメカニズムの研究を行っています。応用研究としては、ビール酵母の発酵モニタリングの確立や、ゲノム編集技術と形態情報を利用した清酒酵母の新しい育種法も開発しています。

【研究テーマ】

現在、進行中の研究テーマは以下です。
  • 研究室集合写真

  • 醸造の未来

(1)オートファジー研究を通じたオルガネラの誕生と崩壊のメカニズム

出芽酵母を真核細胞のモデルシステムとして用いてオートファジーの研究を進めています。オートファジーという現象が興味深いのは、オートファゴソーム形成の過程が極めて特徴的かつダイナミックな膜現象を伴って進行する点にあります。また、オートファジーにより何が分解されるかという問題もオートファジーの生理的意義を考える上で重要な問いです。これらの問題に関して光学顕微鏡や電子顕微鏡などの形態学的手法を用いて研究を進めています。

(2)形態プロファイリングを用いた薬剤標的の同定

出芽酵母を用いた創薬ツールの開発を行っています。具体的には、研究室で開発した形態プロファイリング法を駆使して、(1)出芽酵母の形態変化に着目した抗真菌剤の標的予測、(2)抗真菌剤の標的同定について研究をしています。

(3)清酒酵母のゲノム編集

CRISPR/Cas9のゲノム編集技術を使って、エビデンスに基づく遺伝子改変を行い、清酒酵母の育種を行なっています。育種の過程における細胞形態変化を調べることにより、育種に細胞形態を利用できないかも研究しています。

(4)形態情報を使った発酵・醸造のモニタリングと制御

出芽酵母はエタノールをはじめとして多くの物質を生産し、発酵産業で使われています。発酵・醸造過程では、出芽酵母の状態を把握することが必要ですが、酵母の形態に着目してモニタリングすることを、新しく提案しています。

(5)インテリジェント画像活性細胞選抜法(iIACS)を用いた酵母細胞形態の解析

iIACSは2018年に本学理学系研究科の合田研究室を中心にして開発された、画像情報を基に細胞を選抜するフローサイトメーターです。我々はこのiIACSを利用して、ハイスループット形態解析が行えないかを研究しています。最終的には、形態情報を利用して、新しい酵母の創成を目指しています(スーパー酵母2020プロジェクト)。

(6)ハプロ不全性の発生メカニズムの研究

 ハプロ不全は二倍体生物のヘテロ接合体において機能欠損側の表現型が現れる、つまり優性の法則が成立せずに機能欠損アレルが優性となる現象です。現在は、酵母を用いてどのような特徴を持つ遺伝子がハプロ不全性を示すのか、ハプロ不全性が起こりやすくなる条件について、研究しています。

(7)画像解析プログラムを用いた形態表現型の網羅的解析

出芽酵母の遺伝子がどのように機能的に関係しネットワークを形成して細胞形態を形作るのか、そのメカニズムの全貌を明らかにする研究を行っています。実験室で使われる出芽酵母以外に、ワイン酵母や清酒酵母、自然界で生息する酵母などの形態表現型も解析し、システムズバイオロジーだけでなく進化や育種など様々な領域の研究にも貢献しています。
  • オートファジー

  • 出芽酵母の画像