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連携講座
応用生物資源学分野

内藤 健 客員准教授 博士(農学)

その他の所属先: 農研機構遺伝資源研究センター
Theme

植物育種学、遺伝資源学、植物遺伝学、植物ゲノム学

Keyword

作物近縁野生種、環境適応、全ゲノムシーケンス

Message

農業における最大の問題は環境からのストレスです。一方、過酷な環境に適応して生きる植物は、その問題を見事に解決しています。他の植物ならすぐに枯れてしまうような環境で、それらはどうして生き延びられるようになったのでしょうか。それだけでも十分解き明かす価値のある問いです。でも、100人中100人が思うでしょう。「それを解明できたら、ストレスに強い作物の開発に応用できるんちゃう?」と。面白くて役に立つ。そう言える研究を一緒に進めていきましょう。そして実感して欲しいと思います。「多様性こそ、至宝だ」と。

研究者紹介

初めて野生に生きるアズキの仲間たちを目にした時の感動が、私の原動力です。海岸の砂浜に生えるもの、乾燥した砂地に生えるもの、湛水状態の湿地に生えるもの、むき出しの石灰岩に直接しがみつくようにして生えるもの…。塩に強いものは3%の食塩水に浸けても2カ月以上生き続け、乾燥に強いものは1か月以上水を与えなくても萎れません。石灰岩など、かなりのアルカリ性のはずです。みんな同じアズキの仲間なのに、それぞれ全く異なる環境に適応して生き延びているのです。もしダーウィンがこれを見たら何と言っただろうか、と思わず呟いてしまいました。
 同時に、この植物なら世界の食糧問題を解決する鍵になるかも知れない、と感じました。元々、私が農学部を志望したのは、スーパークロップを作って食糧問題を解決したい、などという青臭い夢を見たことが理由でした。その後、多くのバイオ技術が様々な問題に直面しているという現実を知るようになり、いつしか基礎研究で身を立てていこうと思うようになっていました。しかし野生のアズキたちは私に、昔のその青臭い夢を、思い出させてしまったのです。
 もし、彼らがもつ適応機構を解明して、それらを組み合わせた作物を作ることができたら…? そう思わない日はありません。その一方で、やはり青臭い夢に過ぎないのかも知れないと思うこともあります。しかし、かつて緑の革命を起こしたノーマン・ボーローグや、その弟子で、国際的なジーンバンク事業を推進したベント・スコウマンといった偉大な先人たちは、大真面目にこの問題に取り組んできました。今、彼らと同じ分野にいる私が、彼らと同じ夢を見ていけない理由はないはずだと、そう自分に言い聞かせながら、毎日研究に励んでいます。

  • 野生に生きるアズキの仲間

  • 伊良部島でのサンプリング

研究者略歴

1997年 滋賀県立石山高等学校 卒業
2002年 京都大学農学部生物生産科学科卒業
2004年 京都大学大学院農学研究科修士課程収量
2008年 京都大学大学院農学研究科博士課程修了、博士(農学)
2008年 アメリカ・ジョージア大学植物科学研究科 博士研究員
2010年 農業生物資源研究所遺伝資源センター 任期付研究員
2011年 JSTさきがけ研究員(兼任)
2015年 農業・食品産業技術総合研究機構遺伝資源センター 主任研究員
2015年 東京大学大学院新領域創生科学研究科 客員准教授(連携講座)
2020年 農業・食品産業技術総合研究機構遺伝資源研究センター 上級研究員