農業の生産性の飛躍的向上や農産物の新たな需要・新生物産業の創出を目標として、動物、植物、昆虫のゲノム研究とその成果を活用した生命現象の解析、有用生物機能の解明と利用のための研究を行う。
陸上植物と土壌微生物の細胞内共生は、根粒菌(バクテリア)がマメ科植物に窒素を、根粒菌(カビ)が大半の陸上植物に水分とリンなどのミネラルを供給することで、低肥料農業につながる可能性を示している。我々の研究室ではミヤコグサ、ダイズおよびイネを用いて、正遺伝学的・逆遺伝学的アプローチで共生に関与する植物側の遺伝子を同定し、それらの機能解析をおこなっている。微生物の感染シグナルを受容した植物は、一連のシグナル伝達経路を通じて共生遺伝子の発現調節をおこない、これらは微生物の細胞内感染と維持に必要である。細胞内共生に特異的な遺伝子、およびそれらの機能に関与する非特異的な遺伝子との相互作用を明らかにすることで、共生成立の全貌を明らかにし、その人為的コントロールを目指す。
ほ乳類は、真胎生(true viviparity)という生殖様式を持ち、母体に保護された安定な環境で長期間にわたる周到な器官形成を行う。動物進化の頂点に到達したこの生殖戦略にとって、胎盤が重要な働きをしている。胎盤は胚盤胞の栄養膜細胞をその起源として形成され、予め決められたプログラムに沿って組織を形成して胎児の発育を支えた後に、分娩によってその使命を終える。胎盤細胞の分化はどのような調節を受けているのであろうか?研究のモデルとしてウシの胎盤を用いて胎盤形成と機能発現の機構を解明する。そして胎盤を糸口とした研究から、ほ乳類に普遍的に存在する重要な問題(例えば下垂体ホルモンのパラログが胎盤で発現している等)にもせまる。
地球上でもっとも多様化した動物群である昆虫は、非常に特異的な機能を発達させている。それは、特殊な休眠であったり、独特の生殖様式、環境要因に反応した形態的変化、あるいは特定の微生物の細胞内保持などである。蛾の仲間であるカイコとイネの害虫であるトビイロウンカを中心に、遺伝子解読を行い、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行う。昆虫に特有の機能に関係する遺伝子や昆虫でだけ見つかる遺伝子の働きを明らかにする研究を進める。昆虫の形態的・機能的多様性を分子のレベルで解き明かし、 地球上の生物の成り立ちを明らかにすとともに、その利用や害虫の管理技術開発にも役立てる。
これ以外にも、(独)農業生物資源研究所で行われている様々な植物、動物、昆虫の研究に参加することが可能です。
|
 |
|
ミヤコグサ共生変異系統の例。左:野生系統、右:cyclops変異系統。cyclopsでは根粒菌が細胞内に侵入できない。根の細胞表面を赤色で、根粒菌を緑色で示している。
|
|
 |
|
妊娠65日齢のウシ胎児と胎盤(ウシの妊娠期間は約280日)。ウシ胎膜の表面に約100個の胎盤がスポット状に形成される。胎盤形成は子宮の特定の部位に限定され、胎盤を通じて栄養素の供給やガス交換、老廃物の排泄が行われる。
|
 |
 |
|
カイコマイクロアレイ: 各スポットに異なる遺伝子が載っており、遺伝子発現量の程度を緑と赤の色素の強度で測る。
|
 |
|